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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(オ)851号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人鍋島友三郎の上告理由第一点について。

原判決は、その挙示する証拠を総合して、本件契約が買戻約款付売買契約ではなく、譲渡担保契約であつたことを認定した上、被上告人はその被担保債務につき弁済供託をし、これによつて貸金債務は消滅し、本件物件の所有権は被上告人に復帰したことを判示しているのであり、所論(一)(二)の事実は本件契約締結に際しての事情にすぎず、かかる事情は右契約の効力に影響を及ぼすものとは認められないので、右事実の認定を非難する論旨は採用しがたく、原判決には所論のような理由不備等の違法はない。

同第二点および第四点について。

所論は、いずれも上告人独自の見解の下に事実を推断して原判決に採証法則の違背があることを主張するのであるが、その実質は原審が適法にした証拠の採否、事実の認定を非難するに帰するので理由がない。

同第三点について。

裁判所が証拠を排斥するにつき、排斥する理由を一々説示する必要のないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(オ)第二七号同二三年二月一〇日言渡昭和二五年(オ)一五号同二九年二月一八日言渡当裁判所各判決参照)。されば、原審が採用しなかつた証拠について所論のように判示しても、なんら違法ではない。なお、所論中憲法の精神に反するとの部分は、単なる法令違反の主張に帰しその理由のないこと、前述したとおりである。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)

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